益子焼の特徴

益子焼の特徴とは?多くの人を魅了する謎に迫る


福島晴雄さんの益子焼
福島晴雄さんの益子焼

今、多くの人が益子焼に魅せられています。焼き物の里・益子(栃木県芳賀郡益子町)を訪れる人も年々増え、その中には女性や若い年代の方も数多く含まれます。

そんな益子焼の魅力はどこから来るのでしょうか?益子焼の特徴についてご紹介していきます。

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益子焼shop楽さん(@mashiko_raku)が投稿した写真 –

 

多様化する作品。変わらない「素朴さ」と「温もり」。

大塚雅淑さんの益子焼
素朴さと温もりのある大塚雅淑さんの益子焼

まずは、益子焼の特徴の全体像を見ていきましょう。

 

気取らない素朴さは、益子焼の原点

大塚菜緒子さんのうつわ
大塚菜緒子さんの素朴で美しいうつわ

元々、生活に密着した用具の産地として出発した益子では、甕や壺などの質実剛健な製品が生産の主力でした。確かに「洗練された」とは言えないかもしれませんが、そこにはたくまずして生まれた美がありました。

 

民藝運動によって再発見された用の美が追求された益子焼

力強く、気取らない、手にも暮らしにもなじみの良い。そんな益子焼特有の魅力は、この地に居を構えた巨匠・濱田庄司氏を中心とする民藝運動によって再発見・再定義されました。

故大塚健一さんのすり鉢
故大塚健一さんの益子らしい器

 

その運動の核にあった「用の美」は、まさに益子焼の特徴そのものだと言えます。

多様化する今日にあっても、暮らしにすっとなじむ素朴さや温もり感は、益子焼を特徴づける魅力として継承されているように思われます。

現代生活にマッチするモダンな感覚を模索しながらも、益子焼の原点を忘れない。そこに最大の特徴があるのではないでしょうか。

 

「焼き物らしい焼き物」を生む、益子の土

産地の特徴が益子焼の特徴にどのように反映されているのでしょうか。
益子の「土」から、見ていきましょう。

益子の土で成形された器
益子の土で成形された器

 

益子の土の「ざっくり感」が、益子焼の味わいを生む

陶土としての益子の土は、粗めで砂っぽい(珪酸分が多い)のが特徴とされます。また、一般的に鉄分が多めの赤土で粘りが少ないことや、耐火度の弱さから、焼き物の土として「必ずしも良いとは言えない」とされてきました。

しかし、益子の土のこの「ざっくり感」こそが、益子焼の特徴を生み出す大きな要素になってきたのです。

 

下の写真は大塚雅淑さんの益子焼です。

上の(1)の写真は大皿の全体を写したものですが、下の(2)の写真は同じ大皿を接写したものです。

大塚雅淑さんの美しい大皿
(1) 大塚雅淑さんのエメラルドグリーンの大皿

土の粗さを生かした大塚雅淑さんの益子焼
(2) エメラルドグリーンの大皿を接写。土の粗さが美しい。

土の粗さが見て取れます。大塚雅淑さんは器を制作する際にわざと粗い土を混ぜることで、土感のある味わい深さを器に与えているのです。

 

土らしさは、陶器らしさ・益子焼らしさ

磁器は陶石を砕いて作る「石もの」と呼ばれていますが、一方の陶器は「土もの」と呼ばれます。

固くすっきりとした味わいが磁器の魅力なら、土ものの魅力は文字通り「土らしさ」の味わいにあります。いかにも陶器らしい、素朴で力強い益子焼の原点には、この地の陶土の特徴があったのです。

益子窯元・作家の多くは益子焼共同組合が生成している土を購入して使用しています。組合は益子町の採土場で採取した原土を、大きなミルで砕き不純物を取り除き精土しています。

 

益子焼共同組合から購入する陶土
益子焼共同組合から購入する陶土

なお、益子の土にも、産出する地域によって実は細かな質の差があります。

用途によって変えたり、あるいはほかの産地の土を混ぜて使う作家もれば、逆に徹底して地域・地元にこだわるなど、土に対する考え方も様々です。このあたりも、益子焼の多彩な「今」を支えている要因です。

 

土づくりにこだわる作家

大塚雅淑さんは土作りにもこだわる陶芸家です。大塚さんの工房・窯を取材させていただいた際に見せていただいた、土の生成過程の一部をご紹介します。

陶土の元となる砂利
陶土の元となる原土

土を砕くハンマー
土を砕くハンマー

粗い土とキメの細かい土を分離する
原土から不純物を分離する水簸作業

 

砂利のような原土を、電動ハンマーで砕き篩(ふるい)にかけます。

その後、水簸(すいひ)という原土を水でかき混ぜて不純物を取り除く作業をすることで粘土を作ります。

 

多くの工程を経て生まれる益子焼

続いて陶土を成形し器となるまでの代表的な制作工程をご紹介します。

益子焼の基本的な制作工程を知ることで、陶芸家それぞれのこだわりを知ることができ、益子焼の楽しさを理解する手助けとなりますので是非最後まで読んでくださいね。

 

土を練る~成形する

荒練り・菊練りの2工程で、陶土(現在、多くは「益子焼共同組合」からの仕入れ)を再度練ります。荒練りには土錬機を用いることが多いですが、菊練りは今も手作業です。ともに製品の質を高めるために不可欠な重要な作業です。

土練りに関しては写真や文章で説明するのが難しいので、参考になる動画をyoutubeから引用しました。

この下ごしらえを終えたのち、製品・作品のかたち(フォルム)をつくる成形作業に入ります。

益子焼では「ろくろ」による成形が主ですが、石膏型による「型成形」、粘土を板状にして作る「たたら成形」、更には「手びねり」なども用いられます。

これらの工程は、あらゆる焼き物に共通する一般的な工程と言っていいでしょう。
ここでは益子の伝統工芸士の大塚雅淑さんのろくろの映像をご紹介いたします。湯呑みを成形していますが、一つに2分という熟練の技です。

乾燥後の削りと仕上げ

成形後の「削り・仕上げ」(および乾燥前の装飾)を経て「乾燥」を行います。
下記の写真は福島晴雄さんのマグカップで、成形された器に縦の削りを入れています。この縦の削りを鎬(しのぎ)と言い、2016年現在一種の流行となっています。

福島晴雄さんの鎬(しのぎ)のマグカップ
福島晴雄さんの鎬(しのぎ)のマグカップ

その後「素焼き」をします。
素焼きとは600℃の低温で焼成することで、陶土の水分を蒸発させて、不純物を燃やします。

素焼きされた器の窯出し(木村三郎窯にて)
素焼きされた器の窯出し(木村三郎窯にて)

釉掛け~焼成へ

素焼き後に「釉掛け」(くすりがけ/施釉とも呼ぶ)と「絵付け」を施し、「本焼成」へと進みます。

工程自体はごく一般的なものですが、益子焼においては、現在でも登り窯を用いた焼成が比較的広く行われているのが、特徴のひとつです。もちろん、ガス窯や電気窯も用いられますが、薪の炎でゆっくりと焼かれた独特の味わいは、特徴的な釉薬の味わいと相まって、伝統的な「益子焼らしさ」を生み出してきました。

登り窯(益子大誠窯)
大誠窯の登り窯

益子の伝統的な釉薬、濱田庄司の「柿釉」

■益子焼の特徴を代表する柿釉
柿釉(かきぐすり/かきゆう)は、先に記した濱田庄司氏がそれまでの益子焼の歴史と伝統をベースしながら、模索の中で育て上げた釉薬です。

濱田窯 六角皿 柿釉抜絵 Hamada Gama. #mingei #民藝 #濱田窯 #濱田庄司 #六角皿 #柿釉 #ShojiHamada #120 #栃木県 #益子 #Mashiko

CHARLESTON Satoshi Kagaさん(@charleston_tokyo)が投稿した写真 –

地元の山の岩を砕いて粉末にし、水に溶くことを核にして得られるこの釉薬は、「秋の夕焼け空のような」赤褐色を生み出します。民藝調を特徴づける色彩として、長く支持されており、現在でも益子焼の特徴的な釉薬として人気を誇ります。

■多様な釉薬。土と火とのコラボ
また、益子焼の土は、その特徴から釉薬とのなじみが良いと言われています。ここに薪の炎と灰が加わったとき、何とも言えない素朴な味わいが生まれる。それは益子焼の一大特徴とされてきました。
もちろん、益子焼で用いられる釉薬は、柿釉にはとどまりません。渋い色合いの「黒釉」「飴釉」「灰釉」はもとより、「透明釉」や草木灰を用いた「白釉」などまで、実に様々な釉薬が用いられて、今日の益子焼の多様な作風を支えています。

絵付け・模様付に、あらゆる技法が開花する

■大胆・繊細な「流し掛け」
柿釉・濱田庄司とくれば、続くのは「流し掛け」の技法です。手に持った柄杓で釉薬を流しながら掛けますが、この時、もう一方の手で持った器の方も素早く動かし、大胆かつ繊細な模様を描きいていきます。
分類としては「施釉」に含まれます。が、広い意味での装飾ととらえた場合、特に民藝としての益子焼を特徴づける技法として、忘れてはならないもののひとつでしょう。

木村三郎さんの流し掛け大皿
木村三郎さんの流し掛け大皿(益子焼)
■技法の多彩さ
もちろん、「流し掛け」だけの益子焼ではありませんよ。
従来から多種多様な装飾技法が用いられてきましたし、今日、その広がりはさらに増しています。
「刷毛目」「櫛目」「線彫」「彫画」などの焼成前の装飾から、「流し掛け」「蝋抜き」「筒抜き(イッチン描き)」「吹付け」などの施釉技法が様々に用いられます。
絵付けに関しては、鉄・コバルト等を含む顔料での「下絵付け」によって模様が描かれます。更には本焼き後の「上絵付け」により、赤や黄・緑などの鮮やかな色彩で描くこともあります。
描かれる模様も、縞や格子、幾何学的なものから、花や動植物と、実に幅広いです。

japanese-plum-blossom-ceramic-plate-made-in-Mashiko-by-Haruo-Fukushima
上絵付けの施された福島晴夫さんの益子焼

 

まとめ

このように、民藝運動の成果も含む伝統と歴史を踏まえながらも、とらわれることのない自由な作風・多様な作品が生まれている。そして、それを可能にする風土と技法の蓄積がある。これが、今の益子焼をとらえるときの特徴と言えます。

そこには、しかし、「素朴で気取りのない、土の温もりを感じさせる」何かが、今も息づいています。
どんなに軽やかでポップな作品であっても、それは共通する原点であり、益子焼の魅力の大本となる、大きな特徴なのではないでしょうか。

 

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